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研究概要

 はじめに

    電気的な現象に興味を持っており, それらの現象を忠実に反映した問題を数学的に定式化するとともに, それを厳密な数学解析を通して解明することを目標として研究に取り組んでいます. 具体的には,半導体デバイス中の電子流を記述するモデル方程式や, プラズマ物理に現れる方程式を研究しています. 以下,モデル方程式ごとに,それぞれの研究成果を抜粋して紹介します.

 半導体のモデル方程式

    効率的な半導体デバイスの設計のため様々なモデル方程式が提案され, 数値解析によるシミュレーションに幅広く利用されています. その中でも,Hydrodynamic model(HDモデル), Heat-conductive hydrodynamic model(HHDモデル), Energy-transport model(ETモデル), Drift-diffusion model(DDモデル)などが 代表的なモデルとして知られています. 実際の設計では,デバイスの使用用途により, これらのモデルを使い分けて数値解析が行われており, これらのモデル方程式の時間大域可解性の証明や, モデル方程式間の関係(階層構造)の解明は数学的に興味深いだけでなく, 工学的にも重要な問題といえます. 階層構造は,モデルに含まれる物理パラメータを 形式的に零とする極限によって理解することができます. 例えば,HHD モデルに含まれるモーメント緩和時間と呼ばれる物理パラメータを 形式的に零に近づけるとET モデルが得られ, さらにエネルギー緩和時間を零とすればDDモデルが得られます. (この極限操作は緩和極限と呼ばれています).
    これまでの研究において, HDモデル,HHDモデルの定常解の一意的存在と指数的漸近安定性を示しました. 指数的漸近安定性は,デバイスに一定の電圧をかけたとき電子の流れが 直ちに定常的になる現象に対応し,モデル方程式の妥当性を示唆しています. また,階層構造の解明を目的として, HDモデルの解の緩和極限がDDモデルの解に収束すること, HHDモデルの解の緩和極限がETモデル, DDモデルの解に収束することを示しています.
  1. HDモデルの定常解の存在と安定性(pdf)
  2. HHDモデルの定常解の存在と安定性(pdf)
  3. HHDモデルからETモデルへの緩和極限(pdf)
  4. ETモデルからDDモデルへの緩和極限(pdf)

 プラズマのモデル方程式

    プラズマとは電子と正イオンから構成される気体の一種です. プラズマが接触する固定壁付近には境界層(シース)が形成されます.具体的には, プラズマが壁に接触するとき,プラズマ中の電子と正イオンは壁に流れ込みますが, 正イオンと比べて電子の質量は遥かに小さく移動しやすいために, 電子が過剰に壁に到達して電位が負となります. 負の電位は電子を反射し,正イオンを加速させて, 電子とイオンの粒子束が等しくなるようにプラズマと壁の間に電界を形成されます. このプラズマと壁の間の領域がシースと呼ばれています. プラズマ物理学ではEuler-Poisson方程式(EP方程式)を用いた形式的な議論により, シースが形成されるための条件としてBohm条件が提案されています. この条件は,正イオンが極超音速で プラズマ領域からシース領域に流れ込む必要があることを意味します.
    プラズマの運動はEP方程式によって記述され, シースは EP 方程式の定常解であると理解できます. 私はこの定常解の数学解析を通して, シース形成に関する数学理論の構築を目指しています. これまでの研究で, EP方程式に定常解が存在するための必要十分条件を導いています. Bohm条件はこの必要十分条件をみたしており, Bohm条件下において定常解の安定性も証明しています.
  1. EP方程式の定常解の存在と安定性(pdf)
  2. EP方程式の定常解の安定性(pdf)
  3. 多成分プラズマの運動を記述するEP方程式の定常解の存在と安定性(pdf)

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